中道改革連合の敗北について2026年05月31日

はじめに

1.新党「中道改革連合」に至る経緯

2.選挙結果

3.敗北の要因

4.考察と展望

【参考資料】

 
本稿は長いので、下記からpdfファイルをダウンロードできます。
https://drive.google.com/file/d/1TTcv2hXy7M_K8EU_0JrzYSdNQUDESLSb/view?usp=sharing

はじめに

 昨2025年10月の自公連立の終焉以降、政界はめまぐるしく動き、2026年2月8日の第51回衆院選で、自民党は316議席と単独で2/3を越え、日本維新の会36議席と合わせると与党で352議席という史上最大の与党議席数を獲得した。他方、右傾化する自民・維新による高市政権に対抗する勢力として、立憲民主党(以下、立憲)と公明党の衆議院議員によって「中道改革連合」(以下、中道)が結成され、衆院選に臨んだものの公示前議席167に対し49議席と、118議席も減らして惨敗した。

 自公連立の終焉については、既に、これまでの拙論を整理しつつ、連立解消は妥当だとの立場から、今後の公明党のあり方についても纏め、ブログなどで公開した(「自公連立の終焉に思う」【中野毅の朝ぶろ】https://tnakano1947.asablo.jp/blog/2026/01/11/9829742 )。ポイントは、①自民と公明の連立は基本理念や支持層の大きな相違から矛盾や無理が大きかったこと。②そのため公明の主たる支持層である創価学会員も公明支持への意欲を減退させ、それが先の参院選までの三連敗につながった。③公明の公明らしさ、ブランド性は、大衆的仏教運動体である創価学会から生まれたということであり、その底流にある大乗仏教の「慈悲の精神」「一念三千論に見る縁起論=他者や自然との相互依存的世界観」「桜梅桃李の多様性と包摂性」「この世での清浄な生き方→清潔な政治・政界浄化」である。「大衆のための政治」とともに、そこを忘れてはならない。④公明の支持層は、物価高や格差拡大などで最も影響を受けるローワー・ミドルクラス。その人びとの経済的基盤を底上げするベーシック・サービス論などの政策をしっかり実現すべきである。⑤平和主義は重要な基本理念であり、非核三原則、無制限な防衛費増大の抑制などを断固堅持。⑥政党としてもっと自立し、自力をつけることが必要。党組織をさらに広く深く確立し、日常活動を議員と共に担えるレベルまでにすることで、創価学会に過度に依存しない体制を作る。⑦めざすべき国家像、社会像を明確にし、中道勢力の軸となっていくことが重要である、などである。

 2024年10月の衆院選で32議席から24議席へ、25年6月の東京都議会選挙では23議席から19議席へ、7月の参院選で改選数13から8議席という三連敗を受けて、公明党は党存亡の危機にあるとの総括をし、敗北の最大要因は自民党の裏金議員を何度も推薦したことが、支持者からの大きな批判を招き、離反を招いたことだとした。その意味で、裏金問題や温床である企業団体献金の規制に消極的な高市自民党と手を切るとの決断は理解できる。7月の参院選における比例区得票数521万票は、3年前より97万票も、6年前より132万票もの減少であった。この得票数の減少は、主たる支持母体の創価学会員の高齢化が要因とされることが多い。しかしそれだけでは、この急激な得票減は説明できない。会員の公明党への幻滅による支持の減少や他党への投票が、もう一つの大きな要因なのである。しかし、それだけであろうか?筆者は、そもそも自公連立自体が孕む矛盾が、支持の減少の最大要因と考えてきた(1) 。前記論考は、その考えをまとめたものである。

 連立解消については肯定的評価が全体として77.0%で、自民支持層では74.4%、公明支持層では80%以上だった(産経新聞社・FNN合同世論調査、10月25,26日。産経新聞10月28日)。自民および公明支持層の両者とも、26年に及ぶ連携に不満を抱えていた。自民との連携で公明が比例で900万票近く取ったこともあった(2005年衆院選)が、その後は減少の一途であり、機能不全を起こしていたと言える。

 なお、今回の自公連立解消の背景には、余り語られていないもう一つの要因がある。それは池田大作氏の三回忌を経たことである。26年前に自公連立がなされた時、当時の小渕自民党は苦境に陥っていた。さらに公明党側には自民党による執拗な創価学会攻撃を止めたいとの思惑があった。自民との手打ち、連携によって攻撃はなくなり、26年が経過した。後顧の憂いもなくなった現在、もはや無理して連立を維持する理由も消失したことが、間接的には働いていたと思われる。


(1)筆者は、『戦後日本の宗教と政治』(大明堂、2003年)で創価学会の政治参加を本格的に論じて以来、自民党と公明党の宗教的思想的異質性および基本政策の相違、さらに支持層の階層分析による利害関係の対立などから、自民党との連携・自公連立政権に内在する矛盾点や問題性を指摘してきた。中野 毅「民衆宗教としての創価学会 : 社会層と国家との関係から」『宗教と社会』第16巻、2010年。その問題意識をまとまった形で書いたのが「自公連立政権と創価学会」(島薗進編『政治と宗教』岩波新書、20231月、第3章)である。


以下、本稿では、その後の動向を覚書としてまとめておく。


1.新党「中道改革連合」(略称・中道)に至る経緯

第二次高市政権が維新と連立を組んで発足し、右傾化が明確になると共に、憲政の常道を外れる国会冒頭解散を行い、28日に衆院選が強行された。この暴挙に対し、公明党と立憲民主党は、新党「中道改革連合」を結成して対抗することになった。この一連の動きには驚いたが、右傾化した自民・維新の政権に取って代わりうる中道勢力の大きな塊をつくることへの期待も広がった。筆者はやや拙速であるような印象をもちつつも、成功して欲しいと願っていた。しかし、結果は惨敗であった。

この新党結成に至る経緯は不明な点も多いが、知りうる限り整理すると共に、敗北の要因を考え、展望と期待について記したい。まず、新党結成に至る経緯を時系列で列挙すると以下のようである。

20259月〜12月 自民党総裁選と水面下での接点形成】

922日 自民党総裁選が告示され、党内権力構造や今後の政局が不透明化。

9月下旬(総裁選期間中)野田佳彦代表(立憲)と斉藤鉄夫代表(公明)が、この総裁選の頃から水面下で断続的に接触。但し、両党の合同や連携の為ではなく、諸法案への対応の話が中心であったという。

104日 自民党総裁選の投開票。高市早苗新総裁が決定。この総裁選の時機が、立憲・公明が“将来の政界再編”を視野に入れて意思疎通を始めた起点と位置づけられる。

108日頃 立憲民主党が、野党一本化に向けて玉木雄一郎代表(国民)を首班指名する動きをする。

1010日 公明党は、自民党との長年の連立政権から離脱を決断。これにより公明党は「自民補完勢力」から離れ、独自の中道改革路線を模索しつつ、党の再生をめざす方針へ転換。また今後の衆院選では小選挙区からは撤退し、比例代表中心に臨むことも表明。

この頃から、立憲民主党と公明党との連携の動きが強まり、創価学会の選挙担当者(佐藤浩副会長)に立憲民主党の安住淳幹事長が接触する。立憲から新党設立を含む複数の連携案が提示されたと言われている。

1015日 日本維新の会が自民党と連立の動きを強め、立憲民主党は玉木首班指名を諦める。

1020日 自民党と日本維新の会の連立合意が決まる。他方、野田佳彦代表(立憲)が「中道路線を明確にし、戦っていく」と発言をする。

1021日 高市早苗総裁(自民)が、首班指名を受ける。この後、立憲民主党と公明党は本格的に新党設立の動きを強めていく。

 

20261月 協議の本格化、表面化】

110日 報道各社が一斉に、 「高市政権内で通常国会(123日召集)冒頭の衆院解散を検討している」という動きを伝えた。

111日〜12日 野田代表と斉藤代表 会談。野田佳彦(立民)と斉藤鉄夫(公明)が、選挙協力や連携強化を視野に入れた正式会談を実施。衆院選に向けた連携レベルの引き上げた動きが活発化。野田代表側は、「水面下では以前から協議してきた」と述べ、総裁選期からの接触を事実上認める形に。

113日、週刊誌『FLASH』のサイトが永田町に出回り、「自民党調査」の数字を報じた。自民が当時の199議席から260に躍進し単独過半数を回復する一方、立憲民主党は148から半減し70となるとの予測。公明党も、24から18へ党勢が後退するとされた。この予測が新党結成へと向かわせた一大要因と思われる。

113日 安住氏は、113日付で各都道府県連の代表と選挙責任者に「公明党・創価学会への対応について」と題する書面を配布。

114日 公明党から創価学会へ、新党結成して衆院選に臨むと正式に伝達。創価学会は全国方面長会議を招集して徹底を図る(2)。

115日 新党結成で正式合意。立憲の安住幹事長が「創価学会の佐藤浩副会長を通じて原田稔会長から新党の承諾を取った」とされる。立憲民主党の両院総会で「中道改革勢力として結集していく。この協議は、昨年10月から続いてきたものです。」との発言がある。

116日 野田代表が、総務省への新党設立届出。中道改革連合が設立。

117日 聖教新聞1面「時評 いまを読む①」で、創価学会教学部長・原田星一郎氏が中道論を展開

120日 聖教新聞5面「座談会2」で、新党発足をたたえ、中道の意義を強調

122日 中道改革連合が結党大会を開催。公明出身の候補28人を比例区に擁立と公表。衆院議員が離党し中道に合流したため、公明党代表には竹谷とし子氏が就任。

創価学会は中央社会協議会を開き、衆院選での新党「中道改革連合」支持を決定(公明新聞123日号、聖教新聞同日号)

124日 聖教新聞「時評 いまを読む②」で、慶應大学教授・井手英策氏が中道政治の意義と可能性を語る。

 

 このような経緯で新党が結成され、共同代表に野田・斉藤両氏が、共同幹事長に安住淳・中野洋昌、共同政調会長に本庄知史・岡本三成氏らが就任した。当面は衆議院議員のみが参加し、参議院および地方議員の中道への合流は、将来のこととされた。

政策としては、「生活者ファースト」を政治の原点に据え、平和を守る人間中心の社会の実現をめざす。立憲主義を政治の土台とし、権力の濫用を防ぎ、個人の尊厳と自由を守る。多様な価値観や生き方を尊重し、共生と支え合いによって地域・社会の安定と活力を高めていく。対話と包摂を重んじる中道の立場こそが、今の時代に求められる政治であるとして、次の5つの基本政策を打ちだし、選挙に臨んだ(公明新聞、2026120日号)。

①一人ひとりの幸福を実現する、持続可能な経済成長への政策転換

②現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築

③選択肢と可能性を広げる包摂社会の実現

④現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化

⑤不断の政治改革と選挙制度改革



(2) 與那覇 潤「『敗戦後」の責任論―「だまされた」ではすまされない」『潮』6月号。潮プラス先行配信20260417日 https://plus.usio.co.jp/articles/detail---id-174-pageid-3.html


2.選挙結果

 中道は小選挙区に202人の、比例代表に234人(重複を含む)の候補者を擁立した。公明系からは比例代表のみに28人が立候補し、全員が比例単独として名簿上位に位置づけられた。結果は比例代表で42人、小選挙区では7人しか当選できなかった。公明系は全員当選した。全体として公示前の167議席から3分の2以上の議席を失い、49議席まで減らした。得票数も比例で1043万票と、前回の立憲(1156万票)と公明(596万票)の合計1752万票から大幅に減少した。

 比較第二党が衆院選で得た議席数としては戦後最少で、発議に51人(発議者1人と賛成者50人。衆議院規則第28条の3)が必要な内閣不信任決議や、予算を伴う法案の単独提出が不可能になった。開票中には共同代表の野田氏が「万死に値する大きな責任だと思っています」と述べ、候補者一覧へのバラ付けが中止されるなど、党内に衝撃が広がった。

立憲出身者を擁立した小選挙区での議席獲得はわずか7議席で、公示前の108議席の大半を喪失した。民主王国と呼ばれた地域でもことごとく敗北。北海道・東北地方では神谷裕と階猛を除き敗れ、愛知・新潟・長野などでは全敗した。他の地域でも立憲元代表の泉健太、立憲元幹事長の小川淳也など5名の当選に留まった。若手・中堅議員のみならず、重鎮と目されてきた党首・閣僚経験者らベテラン議員や党役員も次々と落選した。小沢一郎、岡田克也、海江田万里、枝野幸男、江田憲司、玄葉光一郎や、総務省への届出上の代表である山井和則、共同幹事長の安住淳、政調会長の本庄知史、共同選挙対策委員長の馬淵澄夫、副代表の近藤昭一、選対事務局長の逢坂誠二が比例復活もできず(岡田は重複立候補せず)、議席を失った。立憲出身候補の当選は自民党の登載者不足により議席を割り振られた分や比例復活を含め21人で、前回の7分の1に激減した。

比例では、小選挙区からの撤退を引き換えとして公明党出身者を上位で処遇した。共同代表の斉藤鉄夫ら公明出身候補28人は全員当選し、前回落選した公明元代表の石井啓一や公明元副代表の伊佐進一が国政復帰し、公示前24から議席を増やした。一方で立憲出身者は比例復活の機会が極めて限られた。特に近畿ブロック以西では比例の当選者が公明出身者で独占され、小選挙区で落選した議員は惜敗率に関わらず当選が不可能になった。比例で獲得した票は1043万票で、前回獲得した立憲(1156万票)と公明(596万票)の合計1752万票から大幅に減少。前回立憲が単独で獲得した票をも下回る結果となり、獲得議席も64議席(公明20+立憲44)から42議席(自民の登載者不足で獲得した2議席を含む)へ減らした。

ただ自民の得票数と比較すると、小選挙区で自民27710493票(得票率49.09%)、中道は12209641票(21.63%)に対し、比例区では自民21026140票(36.72%)、中道10438802票(18.23%)であった。他の野党は全て500万以下なので、議席数は大幅減だが、票数でみると健闘したとは言える。

注目の東京都第24区(八王子市)でも萩生田光一の85,806票に対し、新人の細貝悠は70,781票を取り健闘した。ただ前回(2024年)衆院選で萩生田は79,216票、有田芳生は71,683票で落選・比例復活している。萩生田は公明支持票がなくなったはずだが、約6,000票も伸ばしている。今回は日本維新の会が推薦をだしたので、前回の18,000票の大半が荻生田に流れ、公明支持層の分を補ったと推測できる。細貝は日本共産党(2021年総選挙で44,474票、2017年で24,349票を獲得している)の推薦がなくなった分、公明支持層が補ったが、不十分だった。

立憲民主党が中道改革連合を公明党と立ち上げたことで、共産党からの推薦がなくなり、その支持層が離れたことは小選挙区では大きく響いたようである。東京都第8区(杉並区の大半)で、現職の吉田はるみ(立憲)が落選したことも、その影響と思われる。

 

3.敗北の要因

 自民党が圧勝した要因の最大のものは、多くの論者や調査が示すように、高市氏個人への高い人気であることはまちがいない。近年の国内の経済的不安定やロシアによる侵略戦争などの国際的な混乱の中で、日本をなんとかしてくれる「強いリーダー」のイメージ作りに成功した。初の女性首相誕生という点も、大きな利点になった。首相になって時間も短く、業績などほぼない状態で、国会冒頭解散という強引さや信任投票のような総選挙に持ち込んだ手腕も評価されたと言える。

しかし、選挙結果は自民党の圧勝(316議席)だが、自民の比例票は2100万票に過ぎず、5年前の岸田総理の時(2021年、2000万票)と大きくは変わらず、小泉総理の郵政選挙の時(2005年、2580万票)に遠く及ばない。自民党が圧倒的に選ばれたというよりも、対抗勢力の中道が選ばれなかった「自滅型選挙」だった。加えて、小選挙区制の弊害が大きく影響したこと、立憲議員の各小選挙区での支援組織の脆弱さなどが災いして議席数の激減に繋がったと言えよう。

 



①立憲、公明支持層の流失-自滅の最大原因

 中道の結成時に期待されたのは、両党による「11=2」を越える相乗効果だったが、それは生じなかった。その要因については種々論じられているが、学術的に信頼性が高く、かつ厳しいのは、小林良彰・慶應大学名誉教授が党理論誌『公明』に寄稿した論考である(3)。小林氏が主催する「投票行動研究会」は、長年にわたって衆参国政選挙の前後に調査を行っているが、この論考には、今回の選挙での幾つかの調査データが示されている。その中で極めて重要なデータは、下記の表で示された数値である。


2025年参院選比例区の立民・公明投票者の主な2026年衆院選投票先(単位:%)
           自民         中道          国民          みらい      棄権(含白票)
立民投票者 小選挙区 7.9 52.6 6.1 2.7 22.7
比例区 7.4 53.4 5.9 6.4 20.1
公明投票者 小選挙区 19.6 50.0 3.4 1.4 23.0
比例区 14.9 52.0 2.0 5.4 20.3
調査主体:投票行動研究会 有効回答数6270人(62.8%)

 

 昨年の参院選比例区で立民に投票した人のうち、今回の衆院選小選挙区で中道に投票したのは52.6%であり、22.7%が棄権し、自民に7.9%、国民に6.1%も流れている。比例区も似たような動向だが、みらいにより多く流れている。

  さらに衝撃的なのは公明支持者の行動である。小選挙区で中道に入れたのは50.0%であり、自民に19.6%も流れている。棄権も23.0%と多い。比例区では中道52.0%、自民14.9%、みらい20.3%、棄権20.3%であった(4)。要するに、旧来の両党支持層が半数程度しか中道に入れなかったのである。この厳しい数値は調査方法や投票者の分類の相違にもよるようであり、新聞各社の出口調査では約70%が中道に入れたという結果もある(5)。もっとも、各種調査でも無党派層や若年層へは、ほとんど浸透しなかったことは事実ある。



さらに各種調査をみると、無党派層や若年層へは、ほとんど浸透しなかったようである(5)。小選挙区



従来の立憲支持者が、原発再稼働や沖縄普天間基地の辺野古移転を容認する方針を打ち出した中道への戸惑いや反発から、支持をやめて他党へ投票したり、棄権したことは容易に理解できる。また立憲支持層にある創価学会アレルギーも影響した。さらに前回衆院選で推薦や支持を表明していた共産党が中道への批判的立場を明らかにし、自主投票にしたことも大きく影響した。

 公明支持者についても、短期間での自公連立離脱から、それまで対立していた立憲との新党結成は簡単に受け入れられない事態であった。26年に及ぶ自民党との連携・連立は重く、人間関係が深まった地域も少なくない。地方議会での自民との連携は、現在でも緊密である。他方、立憲候補は人柄も分からず、人間関係も浅い。これらの要因から小選挙区で、 従来の公明党支持者の約20%が自民党に投票し、50%しか中道に入れなかったとしても頷ける。

公明党の主要な支持母体である創価学会中央の選挙への取り組みは、極めて迅速であった。冒頭の時系列で記したように、14日の方面長会で新党結成を伝えて支持を全組織に徹底し、新党設立を届け出た翌日(117日)には聖教新聞で教学部長が「中道論」を展開した。その後の「紙面座談会」などで新党の意義を強調して支援を明確にしていった。巨大組織がうねりをあげて短期間で新党支持へと急旋回していったのである。

しかし自公連立を解消した時点で、衆院選では今後は比例代表中心で行くことと共に、これまでのような強力なF(友人票)取りをやらないことも表明していた。これは学会員以外への投票依頼は余りせず、会員への支援指示が中心となったわけだが、会員への投票確認も今回は弱かった。創価学会中央が公明党などへの支持を決めても、会員が自主的な判断で他党へ投票する傾向が自公連立政権の後半には顕著になってきたことを、筆者は何度も指摘した。創価学会は、会員の政治的行動は自由であることを公明党結成以来の原則として認めてきたが、それでも大部分の会員は中央の指示に従ってきた。しかし、今回の立憲との新党結成は周知期間も短く、長年対決してきた政党・人物への支援に納得する時間もないまま戸惑いが大きく拡がったようである。支部長クラスの現場責任者は、すでに自公連立時代しか知らず、野党としてのあり方に戸惑っていた。ましてや若年層の会員では、それ以上である。

小選挙区で半数しか投票しなかった主要な原因は、ここにある。しかしながら、これは創価学会員の投票行動が成熟してきた、またはノーマル化してきたとも言える。信仰は同じでも、政治的経済的利害関係は多様である。公明党が結成当初のように宗教性を表に出していた頃は、会員の信仰と合致していた。しかし、いわゆる「政教分離」を行って国民政党として再出発して以降、党の政策と支持者の政治経済的利害は単純には一致せず、政治的選択は多様になる。今回は、それが顕著に表面化したのである。

 


(3 )『公明』20264月号2-8頁。同様の短いコメントが公明新聞2026218日一面にも掲載された。

(4) 『公明』20264月号、公明党機関紙委員会、2-8頁。同様の短いコメントが公明新聞2026218日一面にも掲載された。(衆院選結果 識者に聞く)「首相、イメージづくり成功/民意を的確に反映する選挙制度へ議論が必要/慶応義塾大学名誉教授 小林良彰氏。参考資料参照のこと。

(5)  文末の朝日新聞、時事の調査結果を参照。年代別支持政党については、表「今の支持政党」NHK世論調査、2026218日。また文末の朝日新聞グラフも参照のこと。

(6) 最近のものでは、前記拙ブログ「自公連立の終焉に思う」【中野毅の朝ぶろ】を参照のこと。

https://tnakano1947.asablo.jp/blog/2026/01/11/9829742


②選挙政策の失敗

 中道改革連合が選挙に対し打ちだした諸政策も、急ごしらえだったためでもあろうが的確とは言えない。小林氏は先の論考で、中道の敗因として①政党と有権者の関係が時代遅れ。②政策が抽象的で分かりづらい。③ネット対策の遅れ、をあげている。①では、政党の方針に支持者は従って当然と考えていないかと問う。短期間で新党を結成し、掲げた諸政策も重要な点で従来の方針を変換したにも関わらず、党内論議はほとんどないまま突入した。これではついて行けない支持者が多数出ても当然である。②では基本政策が抽象的で、有権者にもたらされる具体的なメリットが分からない。食料品消費税ゼロをいきなり掲げて、その財源はジャパンファンドでまかなう点も、その実現性に疑問を持つ。他の点も「空っぽに等しい内容だ」と厳しい。

慶應大学教授の井手英策氏も「長い与党の経験を持つからこそ、責任ある政策を掲げる政党として、公明党には期待し助言してきました。野党に転じた昨年11月に掲げた『政策5本柱』の1本目は、全世代型の社会保障の充実。私の持論である『ベーシック・サービス』の概念も明記され、ここまで来たか、と感動したものです。ところが中道改革連合の5つの柱では、トップは経済成長に置き換えられ、社会保障は2番手に後退。目玉の公約も『食品消費税の恒久ゼロ』という、減税ポピュリズムに一変しました。ベーシック・サービスの言葉だけ残っても、全体の方向性は180度逆になった。寂しさ、そして虚しさに押しつぶされそうになりました」と嘆いている(7)。この記事では、立憲との合流の条件をすりあわせる過程で、公明候補を代表比例の上位に置くことと、社会保障という重要政策を後退させるバーターがなされたのではないかと示唆している。

大阪経済大学准教授の秦正樹氏の指摘は辛辣だ(8)。「中道改革連合の党名や綱領を見たとき、公明党の中心的な主張である「中道」を党名に掲げ、公明党および支持母体である創価学会が大切にする「人間主義」という言葉を綱領にそのまま掲げたことに驚いたし、立憲民主党でなく公明党の後継政党のようにも見えた。では、多くの有権者は中道改革連合を文字通りの「中道」と感じたのだろうか。」「立憲と公明が合流を企図した背景には、立憲の左派色を公明の中道色で薄め、公明の宗教的イメージを立憲の政治的背景で塗り替えるというもくろみがあったのだろう。しかし現実には、中道改革連合は考えうる最悪のブレンドとなった。・・・・「人間主義」を標榜することで圧倒的な公明色をまとい、一方で「中道」を自称することで逆説的に立憲由来の左派色を際立たせてしまったのである」。

 

(8) 前掲、與那覇 潤、『潮』20266月号。

(9) 「『中道』訴え、逆に際立った左派色」『朝日新聞』2026217日。https://digital.asahi.com/articles/ASV2G3RZ2V2GULLI001M.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

 

その他にも種々論評されているが、厳しい指摘が多い。筆者は秦氏の指摘と同様に、「人間主義」「中道」などの抽象的で哲学的、かつ創価宗教的な用法を多用したことも敗因の一つと考えている。中道改革連合という「政党」の基本政策が、「宗教団体」創価学会の理念に引き寄せられ過ぎていたのである。世間一般の創価学会アレルギーを引き起こした要因である。

中道政治論は、池田大作創価学会会長(当時)が1964年の公明党結成に際してビジョンとして提唱した。その経緯や主張は『新・人間革命』第11巻の「常勝」「躍進」章に再録されている。その基本部分が以下のようにまとめられて、支持者に配布された。

 

「中道」の理念と公明党 ~新人間革命第 11 巻「常勝」「躍進」の章から~

○山本伸一は、現在のままでは、世界情勢は大変な事態になりかねないと指摘し、世界平和を創 出するための哲学こそ、仏法の「中道主義」であることを訴えていった。

「中道主義を根底にした政治、すなわち中道政治は、対峙する二つの勢力の中間や、両極端の真ん中をいくという意味ではありません。あるいは、両方から、そのよいところをとって、自己の生き 方とするような折衷主義でもありません。色心不二の仏法の生命哲学に立脚した、人間の尊厳を守り、平和と幸福を実現しゆく政治ということであります。

また、その政治は、党利党略が中心であっては絶対にならない。何よりも国民大衆の利益を第一 義に、大衆福祉をめざす政策を実践する政治であるべきです。それが、私どもが支援する公明党 の、永遠の在り方であると、私は断言しておきたい。

そして、そのためには、ある時は、保守政党の政策を擁護していく立場をとることもあるでしょう。 ある時には、革新政党と協調し、進んでいくこともあるでしょう。常に現実的であると同時に、大局観に立った、高い次元の政策を実践していくというのが、中道主義に生きる政治家の行動でなければなりません」

○「私どものめざす中道政治とは、一言でいえば、仏法の中道主義を根底にし、その生命哲学にもとづく、人間性尊重、慈悲の政治ということになります。人間性尊重とは、人間生命の限りない尊厳にもとづき、各人各人の個性を重んじ、あらゆる人が最大限の幸福生活を満喫していけるようにすることにほかなりません。 社会のいっさいの機構も、文化も、そのためにあるものと考え、政治を行うのが人間性尊重の政治であり、それによって築かれる社会こそ、われらの理想社会であると思うのであります」

○「世界の時代の趨勢は、真に人間性に立脚した中道主義、中道政治を求めて動いていることは 明らかです。まさに、中道主義によって、平和と繁栄の新社会を築くことを、全民衆が心から待望する時代に入ったと、私は確信するものであります」

○二十一世紀を、断じて「滅亡の世紀」にしてはならない。絶対に、「希望の世紀」に、「平和の世 紀」に、人間の尊厳を守り抜く「生命の世紀」にしなくてはならない伸一が、公明党のビジョンを発表したのも、そのためであった。(後略)

 

 『新・人間革命』では、大乗仏教の「色心不二」論や「空仮中の三諦」論から中道論を展開し、法華経に至って、「円融三諦」、すなわち三諦のそれぞれが他の二諦を具え、融合し、一体となっていることが明かされ、完全無欠なる生命の真実の姿が説かれたとした。この円融三諦の完全な生命観を自在に展開したのが、末法の法華経である日蓮仏法である。この日蓮仏法に基づき、肉体、物質にも、心、精神にも偏することのない、生命の全体像に立脚した「中道主義」を掲げ、「生命の尊厳」の時代を築きゆくのが、創価の大運動である。

従って公明党の政治も根底は中道主義に基づかなくてはならない。その上で『中道政治で平和と繁栄の新社会』の建設をモットーに、第一に『清潔な民主政治の確立』、具体的には「平和憲法を守る」「議会制民主主義を確立する」「言論、結社、信教の自由を守る」ことを実現していく。内政面においては、『大衆福祉で豊かな生活』をスローガンに、「相互扶助で福祉経済を確立する」「最大の社会保障制度を確立する」「人間性豊かな文化を建設する」などを目標に、前進して欲しい。外交面においては、「戦争のない平和な世界」をめざし、「核兵器の全面廃止を実現する」「国連を改革し、世界完全軍縮を実現する」ことなどを主張したのである。

池田会長が提唱した当時は、東西冷戦時代のただ中にあり、世界的には資本主義対社会(共産)主義の対立、国内では自民党対社会党という構図だった。資本主義的利潤追求やイデオロギーによる支配によって取り残されたのが「人間」だという観点から、「私どものめざす中道政治とは、一言でいえば、仏法の中道主義を根底にし、その生命哲学にもとづく、人間性尊重、慈悲の政治ということになります。人間性尊重とは、人間生命の限りない尊厳にもとづき、各人各人の個性を重んじ、あらゆる人が最大限の幸福生活を満喫していけるようにすることにほかなりません。」と主張した。国家や経済的利益、イデオロギーを優先する東西冷戦時代の左右対決する政治を批判し、公明党は各人の個性を重んじる人間性尊重の慈悲の政治をめざすべきと、仏教の理念に基づきながら政治路線の基本を展開した。宗教団体が、政党を創出し、支援する理由としては十分な主張であると言える。

しかし今回の選挙では、中道政治とは「人間主義」に基づく政治であり、「左でもなく右でもなく、中(みち)にあたる」政治などと強調され、政党の政策や路線の表現としては意味不明であった。政党としては、もっと現実的な意味を明確にする必要がある。政権が右へ旋回しすぎる時は、中道政党は左によってブレーキをかけるのが政治闘争ではなかろうか。また「人間主義」も、近代思想のヒューマニズムを意味するのか意味が曖昧であり、「人間中心主義」と紛らわしい。「生命の尊厳」を謳うなら、全ての動植物の尊厳や環境の重視を主張すべきであろう。「生活者ファースト」にしても、どのような社会層、経済状況の人びとを中心に考えるのか、政策として明確にする必要がある。富裕層も生活者である。用語としては「大衆」が限度である。これもやや曖昧ではあるが、社会学的に定義もされている。総じて、階級的分析、階層論的視点が欠けていると言わざるをえない。この点については、後述する。

以上のような政策上の問題点も多々あったが、筆者の印象としては、自民党総裁の高市氏の掲げた「日本を強く、前へ」「国論を二分する政策の実現」などのスローガンは、中身が全くないにもかかわらず、これまでになく何かをやってくれる首相としてのイメージを有権者に植え付けることに成功した。初の女性首相の誕生という期待もあり、追い風を吹かせた。それに対し、中道の諸方針は受け身のような印象であり、かつ総花的で抽象的だった。政治改革も5番目に格下げされた。若者や無党派層には全く刺さらなかったのである。 

 


③選挙戦術の失敗

 これも種々論じられているが、なによりも中道の二人の共同代表が男性で高齢化しており、女性が中心に出なかったことが、新党が斬新さのない既成政党の野合という印象を一般に与えたことが、最も痛手だったと思われる。地元の阿佐ヶ谷駅前に野田代表、高市総裁の両人が、それぞれの支援者の応援演説で駆けつけたが、前者は雨天のためでもあったが、全く盛り上がらなかった。またその集会や演説内容をネットで確認しようとしたが、前者はいつまでもアップされることはなかった。他方、高市氏の演説は直ちに配信された。

 このようにSNS駆使の未熟さも歴然としていた。自民党は解散総選挙が内定した段階で、党本部および各県ごとに選挙対策本部を立ち上げ、SNSを駆使した戦術を周到に準備した。さらに中道候補へネガティブ・キャンペーンを組織的かつ大量にYouTubeなどで拡散したと報じられている(9)。その結果は、枝野氏や安住氏の大差での落選に現れている。

他方で、公明党は参院選までの三連敗を受けてSNSを重視し、サブチャンネルを開始するなど急速に進展させはした。しかし、その重視する姿勢や依存が裏目に出た面もある。大集会を開いてSNSで拡散させるなどしたが、それらがフェイクだとして逆評価された。

これらからSNSの利用が未熟だとも言えるが、同時に地道な得票行動を軽視する結果になったのではないかと危惧している。SNSでの拡散や大集会では盛り上がっていたが、創価学会の組織での会員への支持促しや友人票の獲得への動きは鈍かった。やはり選挙は地道な支援依頼活動が重要なのではないかと考えざるをえない結末であった。話は飛ぶが、この点は前回のアメリカ大統領選挙で感じたことでもある。民主党のハリス陣営は、有名人やセレブを動員する大集会を各地で行い、一見すると大きなウネリが起こっているように思われた。他方、トランプ陣営は確かに大規模集会も行っていたが、実は草の根レベルでの戸別訪問や地域や大学での小規模集会やセミナーを地道に行っていた。このような活動が、最終的には成功を生みだしたと考えている。

 


(9) 「高市陣営が流した『進次郎は無能』動画」『週刊文春』202657/14日号。


4.考察と展望

今後どうあるべきか筆者自身も暗中模索状態だが、少なくとも立憲、公明の参院議員、地方議員の中道への合流は急がず、中道、公明、立憲が地域ごとの党組織をそれぞれしっかりと確立し、中道改革連合そのものの塊を単純に大きくするのではなく、そのウィングを左右に更に広げていく必要があると考えている。立憲は、中北浩爾氏が既に何度も指摘したように、党組織のガバナンスが崩壊しており、かつ組織として未熟である(10)。立憲系の落選組を、どう処遇し、党組織の要としていくか、資金面も含め大きな課題である。中道勢力の核になるべき存在であるが、その腹が未だに決まっていない。ならば共産党との連携を含めて左ウィングの担い手になるのも一方法である。公明は、中道改革連合に完全に合流して、その出自を消そうとするのではなく、それは消えないのであるし、むしろ前述(1頁)のようにブランド性として認識すべきである。仏教理念に由来する「慈悲の政治=弱者に徹底的に寄り添う」「清潔な政治=政界浄化」「縁起的世界=人間と自然を重視する政治=気候温暖化への警鐘」「非暴力・平和主義の堅持と拡大=原水爆禁止・戦争抑止」など、宗教性をもっと明示しつつ、衆院議員を数人持つ一人前の小ぶりな政党、価値観政党または倫理政党として、独自の路線をとるのも有益である。そうすれば中道改革連合の強烈な創価学会色が払拭されることにもなる。中道改革連合は、政権を取りに行く柱になる政党と位置づけ、その政策を党員・支持者と広く熟議を重ねて練り直し、そこに参加意欲をもつ議員、政治家を改めて募っていって欲しい。中道改革連合から創価学会色を抜くことが肝心である。

今後のあり方について、「支持者や国民の声を活かすボトムアップの政策形成を重視する」(小林良彰氏)、「信頼されるビジョンを練り直し、大きく掲げる。参院に残る公明・立憲はもちろん、中道もまた解散した上で加わり、新たな塊を一から作る。その間の政策論争はすべてオープンにし、メディアを巻き込んでゆく。これしかありません」(井手英策氏)などの提言は胆に命じておく必要がある。井手氏のベーシック・サービス論の骨格、および税のベストミックスの追求などの論は参考資料に記した。

 

 立憲民主党と公明党との合流を単純に歓迎できない理由は、その支持基盤の相違にある。両党の支持者はどのような人々なのか、先に述べた階級的分析、階層論的視点での考察をする。小林良彰氏の研究会の調査結果(11)を元に、各政党氏支持者の世帯年収、年齢、学歴の比較をグラフにした(15頁)。公明と立憲の支持者の相違は、まず世帯年収で公明は200万円未満が高い山になっており、立憲は200300万が山になっていることに気づく。この山は、両者の支持者に定年退職者が多いこと、しかし立憲の年金が高い方に寄っている。公明支持者の世帯年収は600万未満で全体の約72%を占めるに対し、立憲は約65%で、より高収入へと寄っている。年収800万以上となると、公明より圧倒的に多くなり、年収2000万以上の支持者は自民と立憲だけというのも興味深い。なお公明支持者の55%が500万円未満である。日本の世帯平均年収が560万円なので、景気悪化の影響を強く受けやすい層であり、70%が将来に不安感をいだいている。つまり格差拡大の被害をもっとも強く受ける階層なのである。なお500万円未満の支持層は自民42%に対し、立憲51%、共産54%であり、立憲・共産は同様の問題を抱えていることが分かる。

年齢分布を見ると、立憲支持者に60代が断トツに高く、70代も極めて多いことが分かる。これは立憲支持者に定年退職者が極めて多いこと、高齢化が著しく進んでいることを示している。公明支持者も高齢化していると言われているが、立憲ほどではなく、若い層も少なくないことが読み取れる。大きな相違は学歴にも見られる。立憲支持者は大学卒者が圧倒的に多い。他方、公明支持者は高卒が最も多く、短大・専門学校がそれに続く。

 これらのグラフは2019年の参院選前後の調査に基づくデータなので、その後の変化はあると思われるし、中道の結成で支持者の流出も予想されるが、支持者の基本的な性格は推測できる。経済的基盤を基にした階級的視点からは、立憲の支持者には教員・地方公務員や比較的大きな企業の退職者が多く、年収も高い。公明支持者には中小零細企業の従事者また退職者、そして主婦が多い。他方で、両者とも高齢の退職者が多く、下層中間層も半数を超える。その点では公明支持者と共通であり、共闘が望ましいことが分かる。他方、学歴など文化的相違を含む階層的分析から言えるのは、立憲支持者は立憲主義に基づく理詰めの政治思想を展開する傾向があるのに対し、公明支持者は政治活動を信仰生活の延長に捉えており、細かい政策論議には精通していない。これらの相違を有する支持者相互の交流や理解を深めていくことは重要ではあるが、簡単ではないと思われる。

両者の相違を的確に理解すると共に、連携と合流によって支持者の幅を広げ、両者の共通の支持基盤である、中間層から下層にかけての圧倒的多数の国民の生活を支える政策を提言し、実現に尽力することを期待している。

 

なお宗教団体が選挙において特定の政党(候補者)を推薦・支援する活動は、「信教の自由」の展開であり、広く行われている。今回の諸仏教教団の動きも興味深い。全日本仏教会では93人を推薦(63人当選、政党名は非公表)、浄土真宗本願寺派は自民28(当選28)、中道12(同3)他。日蓮宗は自民9,国民民主1,維新1(全員当選)、立正佼成会は自民49(当選39)、中道103(同16)、国民民主18(同11)などであった。立正佼成会は旧民主党時代から民主党系を軸に推薦してきたが、今回は公明が立憲と中道を結成したことにより、間接的に創価学会と共闘することになった(12)。

宗教団体による政治参加にはいくつかのパターンがあるが、創価学会が公明党を結成しての政治参加は独特な形態であった(13)。今後、中道改革連合の支持団体の一つとなり、また公明や立憲への支持団体となることは、会員の階層的多様性を考えると当然のことと思う。それはまた、俗説の「政教分離論」での非難を解消することにもなる。(完)



(10) 中北浩爾氏は、立憲民主党の党組織の問題点、リーダーシップのあり方などを厳しく指摘している。Facebook 2026212日投稿。2025818日の立憲民主党参院選総括。委員会ヒアリングのメモ、朝日新聞インタビュー記事「立憲は大企業。野党に安住せず、もっと仕掛けを」など。https://digital.asahi.com/articles/AST2R3G7BT2RUTFK01MM.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

(11) パネル調査「2019年参院選事前事後調査」。次のサイトで公開部分は閲覧できる。

https://jesproject.wixsite.com/jesproject/jes-3 小林氏からは、この調査の生データを提供していただいた。改めて感謝申し上げる。

 

(12)  『仏教タイムス』2026219日号1面。

(13)  中野毅「政教分離制度下における宗教団体の政治参加」『現代宗教』202559頁他。https://www.iisr.jp/journal/journal2025/

 

 

世帯年収

 
年齢

 

学歴

 【参考資料】

 政策面では、下記の井手氏の講演が参考になる。49日に参議院会館で「ベーシック・サービス推進地方議員連盟」の設立総会が開催された。参加者は公明党、立憲民主党、国民民主党、無所属など超党派で、中道改革連合の小川代表、公明党の司参議院議員も飛び入り参加した。そこでの記念講演として、慶應大学の井手英策教授が「真の中道とは何か」と題して、現代日本が直面する危機の本質と、その処方箋としてのベーシック・サービス論を情熱的に語り、活発な質疑応答があったという。その講演要旨を東京都東大和市市会議員の中間健二氏がfacebookに投稿した(2026410日。「ベーシック・サービス推進地方議員連盟の設立総会に参加」いよいよ地方議会からベーシック・サービス実現に向けて動き出します❗️)。記念講演の要旨は以下の通り。

1. 現代政治経済への痛烈な批判

教授はまず、近年の選挙で主要な争点となった「消費減税」や「経済成長」といった政策を、データを用いて根本から批判した。

  消費減税の欺瞞: 消費税5%減税(15兆円の財源消失)は、富裕層に月2万円近い恩恵を与える一方、貧困層には月7,000円の効果しかなく、より少ない予算(13兆円)で全国民に10万円を配った特別定額給付金よりも不公平だと断じた。

  経済成長の限界: 人口減少が世界的な潮流となる中で、日本経済は長期的に低成長から抜け出せず、成長に依存した社会設計は限界に達していると指摘。政治家が「成長させる」と叫び続けても結果が出ていない現実を直視すべきだと訴えた。

2. 日本社会の病理:「貧困と嫉妬」と「袋叩きの政治」

教授は、日本の財政を「社会を映す鏡」と表現。社会保障支出の8割以上が高齢者向けに集中し、現役世代や障害者、ひとり親家庭などへの支出が極めて貧弱である実態を示し、「ぬくもりのある財政」への転換を訴えた。1990年代後半から続く、公共事業や公務員などを標的にして予算を削る「袋叩きの政治」が社会に「貧困と嫉嫉」を蔓延させ、自己責任論を助長し、人々が互いに助け合う精神を失わせていると厳しく指弾した。

3. 対抗策としての「ライフセキュリティ」

これらの複合的危機への対案として、教授は「ライフセキュリティ」構想を提示した。これは以下の二つを車の両輪とする。

  ベーシック・サービス: 医療、介護、教育などを所得制限なく無償化する。これにより「救済される屈辱」をなくし、誰もが尊厳を持ってサービスを享受できる社会を目指す。

②品位ある最低保障(ディーセントミニマム): 生活扶助や失業給付を拡充し、住宅手当を創設する。これは貧者救済ではなく、誰もが失業などのリスクに直面した際のセーフティネットであると位置づけた。

4. 財源論と社会ビジョン:「希望と痛みを分かち合う社会」

教授は、この構想の財源として消費税5%増税が一つの目安だとしつつも、税を「取られるもの」ではなく「社会の会費」と捉え直す意識改革を促した。例えば、消費税1.5%増税で大学と介護の授業料が無償化できると具体例を提示。「希望と痛みを分かち合う社会」を築くことで、将来不安から過剰貯蓄に回っていた資金が消費に流れ、結果的に経済も活性化するという好循環のビジョンを示した。

5. 結論:「真の中道」と地方議員への期待

最後に、「中道」とは臆病と無謀の妥協点ではなく、それらを乗り越える「勇敢」さだと定義。ベーシック・サービスは「弱者救済 vs 自己責任」「健全財政 vs ばらまき」といった従来の対立軸を超越し、平等や成長を「結果」として実現する革命的な政策であると結論づけた。そして、危機的な時代だからこそ理想を語るべきだとし、国政に先んじて地域の実情から声を上げる地方議員たちに、この運動のフロントランナーとしての熱い期待を寄せ、講演を締めくくった。

 

小川淳也・井手英策「君は中道を立て直せるのか」『中央公論』20266月号、128頁~

 井手:これまでの税の考え方も変えるべきです。例えば、消費税1%分の税収は約3兆円。大学の授業料が無償化出来ます。すると現役大学生の親はもちろん、小さな子供もいる親も将来の進学のための貯金が不要になります。この貯金が使われ経済が回り、消費が伸びて税収が増える。この税収で借金を返す。3兆円の税収は国民に戻ってくる。132

 井手:ヨーロッパ諸国が消費税を重視するのは、高齢者も含めた社会全体で負担を共有し、豊かな税収をあげられるからです。例えば、消費税を財源として社会保険料を引き下げると、現役世代と高齢者の負担のバランスを変えることができます。 但し、社会保険料は企業と折半だから企業も負担が軽くなります。そこで法人税を引き上げるという選択肢が浮かぶ。その税収を現役世代の教育に使う。消費税で負担が増える高齢者に使う。教育投資で労働者の質が上がれば、経済の成長率が上がり、企業にもメリットがあります。こうした税のベストミックスを考えることが大切です。133-134

 

 

潮プラス HOME コンテンツ 創価学会【先行配信】「敗戦後」の責任論――「だまされた」ではすまされない 20260417日配信

https://plus.usio.co.jp/articles/detail---id-174-pageid-3.html

 

三春充希 第51回衆院選総括試論。

https://note.com/miraisyakai/n/n79e6a411994e?from=email

 

松谷満 なぜこの層は右傾化しないのか

https://president.jp/articles/-/108833

 

時事:創価学会員の何割が中道候補に投票?衆院選小選挙区で軒並み敗北【解説委員室から】

https://www.jiji.com/jc/v8?id=20260213kaisetsuiin199&fbclid=IwY2xjawQs7DZleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEeTKACaZAQOw3KroFPgkom_C-OZg_6lDZaVtik7UWynsjBu18ZFZMFxHwmyBg_aem_G4ukJL8OidpYHGd1ZfFKoA

 

朝日新聞:保守層自民に回帰、中道無党派層に浸透せず: 202629日朝刊、4

出口調査によると、参政に昨年入れた人のうち18%が自民に投票した。参院選で2議席を得た保守を見ても、保守に入れた人のうち16%が今回、自民に投票した。

 参院選比例区で国民民主に投票した人も、うち18%が自民に入れた。国民からの流出先として他に目立つのはチームみらいで、参院選で国民に投票した人の8%が今回流れた。一方、参院選比例区で日本維新の会に入れた人のうち、自民に13%、みらいに7%が流出したという。

 中道は、支持率で自民に大差をつけられた上に、無党派層に浸透できなかったことが響いた。自民の支持率は今回40%で、前回衆院選の33%から増えたのに対し、中道は12%で、前回の立憲の18%、公明の5%の計23%から半減した。

 今回、中道が候補を擁立した202選挙区のうち、調査が実施できた200選挙区をみると、無党派層で中道候補に投票したのは33%で、自民候補に投票した40%に及ばなかった。前回、立憲が候補を立てた207選挙区の無党派層の投票先は、立憲が46%で、自民の22%の倍以上だった。

 今回の200選挙区では、中道支持層の91%が中道候補に投票。また、昨年参院選の比例区で立憲に投票した人のうち、今回中道に投票したのは78%。昨年公明に投票したという人で、中道に投票したのは73%だった。公明は昨年まで自民と連立を組んできた。昨年の公明投票層には自民支持層もある程度含まれているとみられる。

 

政治学者・秦正樹 「中道」訴え、逆に際立った左派色 有権者の意識から見る大敗と希望

2026217 700分 寄稿・有料記事

https://digital.asahi.com/articles/ASV2G3RZ2V2GULLI001M.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

 

(衆院選結果 識者に聞く)首相、イメージづくり成功/民意を的確に反映する選挙制度へ議論が必要/慶応義塾大学名誉教授 小林良彰氏 公明新聞  2026218日付 1

https://digital.komei-shimbun.jp/kmd/article/0242202602180102?fbclid=IwY2xjawQs8OdleHRuA2FlbQIxMQBicmlkETF2SUNIQUtXMDdMVVpNS3c3c3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHj1aEBShvSUr3jaHLNHCBj-9ZZy2byGynQmAkxVHg-N1Zzed0KHcEBWer-aL_aem_wmAxapd5Z2P5X64-B1UsKQ

 

『宗教問題』53号、特集:創価学会と中道改革連合、2026331日。

 

 

  

自公連立の終焉に思う2026年01月11日

本稿は長いので、下記リンクから全文のpdfファイルをダウンロード出来ます。

https://drive.google.com/file/d/1hDTBjuMoowDa1uYxQCp74STuT-2WClco/view?usp=sharing



〈連立離脱の経緯〉

20251010日、公明党は高市自民党新総裁との第2回目の党首会談で、自公連立政権に区切りをつけると表明し、26年間の自民党との連携を白紙に戻し、政権からの離脱を表明した。2回の新総裁との政策協議において、公明党が総裁選直後の挨拶の段階から伝えていた3点の重要事項(靖国神社参拝にかかわる歴史認識の問題、外国人排斥の風潮への懸念、そして政治と金をめぐる問題)のうち、企業団体献金の規制強化および裏金問題の全容解明について積極的な回答が得られなかったことを、離脱の原因とした。

2024年の衆議院議員総選挙、256月の東京都議会議員選挙、そして7月の参議院議員選挙での連続した敗北を受けて、党存亡の危機にあるとの総括を出した公明党にとって、自民党の裏金議員を何度も推薦したことが、支持者の離反、大きな批判を招いたことが大きな要因との認識にたった決断だったという。連立離脱表明後の記者会見で斉藤代表は、推薦した裏金議員への投票依頼のために支持者が如何に苦労したか、全国から聞いたと語っていた。そのストレスが限界を超えたということである。創価学会学会員の票がなければ落選していた自民党議員は少なくない。先の衆院選での萩生田氏、参院選での京都の西田氏などは、その典型である。こうした公明党および支持者の苦労にまるで無頓着に、自民党新総裁に選ばれた高市早苗氏が党役員人事で萩生田氏を幹事長代行に相談もなく据えたことは、いかに忍耐強い公明党といえども容認できなかったのである。

この点については、私自身も251月公刊の拙稿「政教分離制度下における創価学会の政治参加―宗教的自由の範囲と限界を考える―」『現代宗教202520251月、p.51-76。  https://www.iisr.jp/journal/journal2025 /)において、衆院選の敗北の重要な一因として指摘した。また本稿を紹介する拙facebookでも「政治倫理の厳しさは政界浄化を掲げた結党以来の伝統です。他党候補の推薦においても『人物本位』で判断するのですから、厳しい倫理的条件を課して欲しいと願います。勿論、基本思想や理念において大きく乖離する人物は論外です。玄人政治のような取引きをいつまでも優先しているようでは、足下から崩れることになります。『うるし千ばいに蟹の足一つ入れたらんがごと』(御書新版1435頁)くならないよう願っています。」と記した。

しかし、公明党は7月の参院選において、またもや裏金議員を推薦した。推薦基準を厳しくしたとか、現地の了解があればなど言い訳はあったが、種々の選挙での取引など玄人政治に堕落した公明党および支援組織の首脳部の大誤算であり、支援者の苦労を無視した傲慢さの結果であったといわざるをえない。その結果は惨憺たるものであり、比例区得票数521万票と、3年前より97万票も、6年前より132万票も少なく、改選数7に対して4名しか当選しなかった。得票数の激減は、主たる支持母体の創価学会員の高齢化が要因とされる。しかし、それだけでは、この急激な得票減は説明できない。学会員の公明党への幻滅による支持の減少や他党への投票がもう一つの要因であると考える(後述)。

 

筆者・中野は、2010年の下記論考で明示して以来、さらに遡れば単著『戦後日本の宗教と政治』(大明堂、2003年)で創価学会の政治参加を本格的に論じて以来、自民党と公明党の宗教的思想的異質性および基本政策の相違、さらに支持層の階層分析による利害関係の対立などから、自民党との連携・自公連立政権に内在する矛盾点や問題性を指摘してきた。

中野 毅「民衆宗教としての創価学会 : 社会層と国家との関係から」『宗教と社会』第16巻、2010年。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/religionandsociety/16/0/16_KJ00008159920/_article/-char/ja

 


その問題意識をある程度まとまった形で書いたのが、下記の岩波新書の第3章である。

島薗進編『政治と宗教: 統一教会問題と危機に直面する公共空間』(岩波新書、2023124日)。

序章  公共空間における宗教の位置 島薗進

第1章 統一教会による被害とそれを産んだ要因 島薗進

第2章 統一教会と政治家・有力者の関与 中野昌宏

第3章 自公連立政権と創価学会     中野毅

第4章 フランスのライシテとセクト規制 伊達聖伸

第5章 アメリカ-政教分離国家と宗教的市民 佐藤清子

終章  現代日本における宗教と政治 島薗進

https://www.iwanami.co.jp/book/b618315.html

  岩波新書で創価学会の政治参加、特に自公連立政権について取りあげられるのは初めてなので、戸田会長時代から自公連立にいたる創価学会の政治参加の過程を整理し、自公両党の国家観・憲法観の相違、支持層の社会的経済的、そして宗教文化的相違、衆議院総選挙で少数の小選挙区で当選するための自民党との不公平な選挙協力、結果として補完政党として自民党政治の延命に加担していた事などを、中北浩璽氏や小林良彰氏など政治学者の論を活用しながら、自公連立政権の内在的矛盾と問題点を指摘した。今回の離脱は、大義名分や経緯は色々語られているが、それらの矛盾が限界に達した結果と言えるだろう。今後の党の政策や運動に是非参考にして欲しいと願って書いたので、今回の連立離脱に何らかの貢献をしたなら幸いである。

 なお本書は、安倍元首相の殺害犯とされる山上被告の裁判が始まったことで、旧統一教会と自民党などの政界との関係を改めて考察する上でも有益である。またアメリカではトランプ氏が再び大統領となって国内および世界に混乱を引き起こし、フランスのマクロン政権も混乱を始めた。世界の政治と宗教の現状を再考察する上でも参考になる。

 

今回の連立離脱劇で改めて感じたことは、公明党の存在や役割、その政策などが如何に世間に知られてなかったかという事である。離脱に当たっての斉藤鉄夫・公明党代表の実直な人柄や「政治と金」の問題を徹底的に解決しようとする姿勢に賛同し、公明党の存在を改めて再認識したという多くの声を聞いた。自民党との連立が長期にわたりすぎ、「下駄の雪」と揶揄され、何があっても権力側に従属する政党だと思われて久しく、一般世間ではまるで無視されていたと言える。政治の安定という大義名分の下で、没落しかけた自民党の政権維持にどれだけ(支持者の良心を犠牲にしてまで)手を貸してきたか、他方、小泉・安部政権下での自民党の右傾化に如何に歯止めをかけてきたか、ほとんど知られてなかったし、理解もされてなかったのである。

典型的な一例は、現国会で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と高市首相は安易な答弁をして大問題になったこともそうである。右傾化の度合いが強まった第二次安倍内閣(201212月成立)で最も紛糾した安全保障法制問題において、公明党は集団的自衛権の行使に歯止めをかけることに腐心した。結果として「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」にのみ当該自衛権発動を認める厳しい「新三要件」が策定され、20159月、安全保障関連二法が成立した。公明党としては「個別的自衛権の拡大」に抑えこみ、「限定的な集団的自衛権」の行使として自民党を納得させたのである(本書123頁。中北『自公政権とは何か』289299頁)。この条件から見れば、高市氏の言う台湾有事、つまり台湾を中国が軍事的攻撃を始めても、日本の自衛隊や同盟国米軍の基地や艦船、さらには民間施設が直接攻撃されなければ、「存立危機事態」にはなりえない。彼女の不勉強、無理解に猛省を促したい。

不勉強は彼女だけではない。公明党の活動や業績は一般紙やメディアのニュースで流れることもほぼなく、公明新聞を読んでないと分からない。しかし、支援者ですら公明新聞の購読者は少ない。また日常的に街宣活動する議員は少なく、一般市民に公明党の活動・主張を紹介し、対話する機会もほぼない状態である。参院選などでの敗北を受けて出された総括では、それらの点も反省材料としてあげ、一般市民との対話・交流のチャンネルを増やす努力を開始したことは有意義である。しかし、YouTubeなどSNSでの露出は増やしたものの、生身の人間対人間の対話・交流の機会が増えたとは未だ言えないことは胆に命じて欲しい。

 

〈連立離脱後のあり方〉

 今回の自公の連携・連立解消によって、自民党は衆院総選挙での大幅な議席減になる可能性も高く、他方公明党にとっては、小選挙区での全議席を失うことになりかねない。しかし、この連立解消についての評価は肯定的評価が全体として77.0%で、自民支持層では74.4%、公明支持層では80%以上が肯定的だった(産経新聞社・FNN合同世論調査、102526日。産経新聞1028日掲載)。つまり自民および公明支持層の両者とも、26年に及ぶ連携に不満を抱えていたことが分かる。

 ましてや、この度の高市政権は自民党議員および党員の右派を支持基盤とし、高市氏自身も右派的思想・信条をもっている(彼女の右派的保守的信念が本物かどうかについては、大いに疑問もある。斉藤鉄夫・佐藤優、2025年、29-30頁参照)。離脱の公式な理由は高市氏が政治改革に消極的だったことであるが、安倍晋三氏ほど柔軟性を持たず、右派的信念が根底にある高市氏との共存は、そもそも不可能であったと言える。故に、連立解消は妥当であった。

 

私個人は、少なくとも公明党にとっては良かったと考える。その理由と課題を記す。

1. 「公明党らしさ」、または「公明党であること」の復活

 政権離脱表明後の公明党の動き、公明新聞の論調、支持者のSNS投稿などを観察していると、自民党との長い連携で喪失しかけていた公明党の本来のあり方に覚醒し、アイデンティティを再構築していると感じる。記述の拙稿「政教分離制度下における創価学会の政治参加―宗教的自由の範囲と限界を考える―」『現代宗教202520251月公刊、p.51-76https://www.iisr.jp/journal/journal2025/ )の後半(創価学会の政治参加の経緯と課題について記した)でも指摘したように、創価学会が政界に進出した理由は、「国立戒壇の建立」という当時の事情を反映し、しかし現代から見れば時代錯誤的な宗教的目標も掲げていたが、他の重要な目的として「政治に仏法の慈悲の精神を」「政治を庶民の手に」「政界浄化」「政治を監視せよ」などが主張されていた。1970年に「宗教政党」から普通の「国民政党」に脱皮した後も、これらの基本的な精神や方針は失われてはならないはずであった。しかし自民との連立政権をながく続ける間に、政権批判の矛先は鈍り、自民政府の代弁者、尻拭い役に堕していったと言わざるを得ない。公明政治、政界浄化の精神を忘れ、自民の裏金問題を「選挙の取引のためには、ある程度の妥協はしかたがないさ」と、平然と推薦するようなていたらくに堕していたのである。

 公明党のブランド性、つまり「公明党であることの意義・意味」は、政権運営・国家運営の経験の蓄積、各党との調整能力などが強調されているが、それらは他の野党も政権参加など経験を積めば得られる事である。公明党のブランド性は、大衆的仏教運動である「創価学会が生み出した政党」である点にある。初期の宗教政党から普通の国民政党になったとはいえ、立党の基盤には大乗仏教の「慈悲の精神」「一念三千的世界観」「縁起的世界観」などが流れているはずである。そこから導き出される「倫理観」を明確にし、政界浄化など政治倫理の確立、「政治を庶民の手に」戻し、弱者の小さな声を活かす民主主義の再生、単純な人間中心主義ではない「自・他・自然との共生」、桜梅桃李のそれぞれの個性を最大限に尊重し、活かしていくという「多様性の尊重」「多文化共生」などにあると筆者は考えている。そうした独自性を明確にし、発揮して貰いたい。宗教界の良心を代表する政党でもあって欲しい。

 

2. 創価学会員の高齢化と公明離れの加速

2024年の衆院選からの三連敗の要因については、より深く検討しなければならない。257月の参議員比例区得票数は521万票と、3年前より97万票、6年前より132万票も少なく、改選数7に対して4名しか当選しなかった。得票数のこの激減は、主たる支持母体の創価学会員の高齢化が原因とよく言われる。しかし、それだけではない。会員の公明党への幻滅による支持の減少や他党への投票も大きな要因と考える。その点について、筆者は前述の2010年論文で既に指摘した。

 この2010年論文は、20098月の衆議院総選挙で自民党および公明党が歴史的敗北をし、民主党政権に変わったことを受けて、1999年から10年に及んだ自公連立政権の問題点、その影響を、統計的事実をもとに集中的に論じたものである。この敗北の結果、公明党の新代表に選ばれた山口那津男氏は、自公連立の10年間で、公明党らしさが失われた。この期間の功罪をしっかりと総括・反省しなければならないという趣旨のことを述べていた(同論文126頁)。その総括の際に認識していたのか不明であるが、この第一期自公連立の時期に、じつは「公明支持層の公明離れ」が顕著になっていた。にもかかわらず、その後も自民党との連携、連立政権を続けたことによって、傷口を深くしたと言える。

 もちろん連立に、いくつかの利点があったことは事実である。国政選挙では、公明候補のいない小選挙区で公明支持者が自民候補に投票する見返りに、比例区では自民が公明への投票を呼びかける「見返り選挙協力」の恩恵も受けることができた。その結果、少数政党に圧倒的に不利な小選挙区比例代表並立制のもとで、小選挙区で79の議席を確保することができたし、2005年の衆院選では比例区で898万票と過去最多の票を得ることもできた。その他にも、政権に参画しているが故の利点が数多くあったことは言うまでもない。

 しかし基本理念や支持層の経済的基盤の相違から、それまで敵対してきた自民党との連携や連立に違和感をもつ創価学会員が増えてきたことも事実であった。自公連携で小選挙区(衆院選)や選挙区(参院選)で公明支持層が自民党候補を支える仕組みが動き出し、公明党支持層、つまり創価学会員は自民候補の支援活動を懸命にし始めた。他方、自民支持層の公明党候補への支持も徐々に拡大していたが、比例区での自民支持層の公明党への投票率を見る限り、その貢献は限定的と言わざるを得ない状態であった。20098月の衆院選では、自公連携の問題性が早くも露見した。公明候補がいない292小選挙の出口調査では、公明支持層のうちの自民候補への投票は10%減少して68%であり、19%が民主候補に投票していた。また公明候補がいた8小選挙区で自民支持層が公明候補に投票したのは前回(2005)より15%下回る53%にとどまり、民主候補に31%が流れた。比例区での公明支持も1%以上減って6%であった。現場からは、もう二度と公明党への支援活動はやりたくないという自民党後援会関係者の声が報道され、公明党側も自民党との連携には早くも慎重になっていた。

 参院選の選挙区で公明支持層が選挙協力相手ではない民主候補に投票した割合は、2001年の7%から2004年は12%へと大きく増加し、共産候補支持も2%から4%へと伸びた 。また2007年参院選では比例区で8%が他党へ流れ、20098月の衆院選では10%が他党へ流れている。上述の自民候補を支持すべき小選挙区で68%しか自民支持へ回らなかったことと合わせて考えると、すでにこの段階で公明支持層に「公明離れ」が進行していたのである(同論文127-129頁)。この論文は、現在読み返しても、中々良く書けていると自画自賛している(笑)。是非、読んでいただきたい。

 参院選での三連敗を受けて、党存亡の危機にあるとの総括を出した公明党も、自民党の裏金議員を何度も推薦したことが、支持者の離反、大きな批判を招いたと認めた。衆院選での萩生田氏、参院選京都選挙区での西田氏への推薦は、その典型である。この推薦で公明支持者がどの程度他候補に投票したか確認しておく。下図の出口投票によれば、衆院選で東京24区の萩生田候補に投票した公明支持者は65%に留まっている。参院選の京都選挙区で西田候補に投票した公明支持者は顕著であるが、他候補に投票した支持者がいたことも読み取れる。

 

衆院選2024東京24区

  〈朝日新聞デジタル、20241029日掲載〉

 

 参院選京都選挙区得票割合 20257 

   〈京都新聞デジタル、2025721日掲載〉

 

こうした候補は、公明支持層の支援がなければ落選していた可能性が大きい。不本意な候補への推薦が、公明支持者の公明離れを強めたことは明らかである。まさに『うるし千ばいに蟹の足一つ入れたらんがごと』(御書新版1435頁)くなり、足下から崩れていったのである。

 

3. 支持層の経済的、政治的、思想文化的相違

 何度も指摘しているが、公明支持層の階層的位置は、自民党のそれと比べて低い。

国民の経済格差の拡大は深刻である。小泉政権以降の新自由主義的経済政策、その延長のアベノミクスの結果、一部の大企業は活性化したものの、労働者の賃金は上がらず、格差がかつてなく増大した。創価学会員の社会階層は今でも低く、格差拡大の被害をもっとも強く受けている。小林良彰氏による公明党投票者の社会属性調査(20197月)でも、学歴は平均より低く、世帯年収も約半数が400万円未満であり、6割以上が500万円未満である。日本の世帯平均年収が560万円なので、景気悪化の影響を強く受けやすい層であり、70%が将来に不安感をいだいている(*)。小林氏の指摘の元になった「投票行動研究会」によるパネル調査「2019年参院選事前事後調査」データをさらに解析してみると、図のような結果が得られた。自民党の支持層と比較すると、公明党支持層の年収は低い方に偏っている。共産党支持層と比較しても低い方に多い。自民党の支持基盤とは経済的に(また文化的にも)大きく異なることを、公明党はしっかり認識して政策を決めていく必要がある。

 このようなズレや利害対立が鮮明になるにつれ、支援者の精神的ストレスも増大し、選挙活動への意欲を削いでいる可能性も大きい。加えて、ごく少数の衆議院小選挙区で議席を確保するために、種々の政治的駆け引きも行われ、支持者のストレスは増加するばかりである。

野党となった公明党は、その存在意義を改めて問われている。「大衆とともに」という立党精神に立ち返るということは、公明党を支える「大衆」とはどのような人々なのかをしっかり捉え直すことである。前述のように経済的には低い層に多く、これらの階層の経済力を引き上げ、安定し安心な生活を送れるようにすることで、国民全体の底上げも実現する総合的政策の実行が期待される。

 

世帯年収(全体)

公明支持者

1 200万円未満

169

9.66

10

0.57

17.24

2 200300万円未満

192

10.98

4

0.23

6.90

3 300400

244

13.95

10

0.57

17.24

4 400500

233

13.32

8

0.46

13.79

5 500600

201

11.49

10

0.57

17.24

6 600700

166

9.49

7

0.40

12.07

7 700800

153

8.75

3

0.17

5.17

8 8001000未満

162

9.26

4

0.23

6.90

9 10001200 

92

5.26

1

0.06

1.72

10 12001400

41

2.34

0

0.00

0.00

11 14002000

55

3.14

1

0.06

1.72

12 2000万円以上

41

2.34

0

0.00

0.00

 

1749

100.00

58

3.32

100.00

  

 

学歴(全体)

公明支持者

1中学・旧高小

32

1.83

4

0.23

6.90

2高校・旧中学

441

25.21

23

1.32

39.66

3高専・短大

428

24.47

16

0.91

27.59

4大学以上

848

48.48

15

0.86

25.86

合計数

1749

100.00

58

3.32

100.00

 

4.目指すべき社会・国家像を明確に

昨年来の三連敗の要因の一つとして、自民との連携・連立に配慮しすぎて、公明党の独自性、特にいかなる社会や国家を目指すのかが不明となっていたという指摘もでていた。その通りである。野党となった現在は、その時以上に、将来の政権奪取または政権連立をめざす政党として、どのような社会、国家を目指すのか、どのような世界をいかなる外交政策によって目指すのかを、改めて強く問われることとなった。

今回の総括で、責任ある「中道改革勢力の軸」となること、その基本政策として、①世界の平和と安定を図る現実的な外交・安全保障、②信頼を取り戻す政治改革、③科学技術による成長と、経済・エネルギー・食料の安全保障、④選択肢と可能性を広げる教育・ジェンダー・秩序ある共生等の包摂的な社会政策、⑤少子高齢化とインフレに対応した持続可能な新たな社会保障制度改革――という5つの柱をあげた(斉藤・佐藤、2025.12, 53-54101頁から)。

しかし、総花的な主張で、何が公明党の独自性なのかよく分からない。まず中道改革とは何を、どう改革するのだろうか?。中道路線は立憲民主党や国民民主党も掲げている。公明の中道路線の独自性は何か?一説では、右や左の中間と言うことではなく、「道にあたる」「人間中心」という。人間、人間主義という用語は政治的用語としては曖昧すぎて不適当である。従来の「大衆の・・・」という事なのか?

軸になるということは、中道政治を標榜する政党や政治家を統合して政権獲得をめざす中心になるということなのか?立憲、国民に加え、自民党内の中道・左派をも糾合していく必要もある。その覚悟なら、しっかり頑張って貰いたい。

5本の柱も、そのどれを重点的に追求するのか明確にすべきだ。公明らしさの独自性としては、②で政治資金の透明性、清潔な政治の徹底的追求、④移民や異文化を排斥するのではなく、多様性の尊重、多文化共生を推進した包摂性のある社会や文化の構築、⑤でベーシック・サービス論に基づく「弱者を生まない社会の構築」などを強調すべきだろう。

 

5.政党として自立し、自力をつける必要

今回の離脱をめぐる論議において、支持母体である創価学会から自立する必要性についての主張が目についた。今回の連立離脱は、公明党が一人前の政党として自立するチャンスであることは事実である。これまで制限されていた独自の党員組織をさらに強固にし、日常活動の足腰を鍛えることは必要不可欠である。SNSなどによる発信力、広報力の強化も必要ではあるが、もっと多くの議員が日常的に街頭に出て、一般の人びととの対話をする必要がある。支持母体である創価学会内部での広報、政治学習だけでは不十分である。その意味で、この度、従来の党員組織とは別に、公明党に関心をもつ市民対象の公明党SNSサポーター組織「チームRISE(チームライス)」を発足させたことは有意義である。

もはや発足母体である創価学会の組織力のみに依存する政党であってはならず、逆に創価学会にとっても、政治への過度の関与や選挙に明け暮れる事態は、創価学会の理念、信仰を掘り崩すことにもなる。この点は過去の論考で何度も指摘してきた。

しかし同時に、公明党が公明党である意義は、大衆的仏教運動である「創価学会が生み出した政党」である点にあることも忘れてはならない。従って、政党としての自立性の強化といっても、創価学会との関係を切ることではない。安定した支援組織のない政党は容易に崩壊するし、時流を追いすぎてポピュリスム政党に堕してしまう。重要な点は、日常的な政治活動を担える党員やサポーターの制度を整えて、選挙時などの創価学会の負担を減らすことである。そのためには創価学会以外の恒常的な支援団体、組織を増やす必要もあろう。

そのためには、創価学会員以外の議員を増やすことも考慮しなければならない。中北浩璽氏が近共著で指摘したように、自公政権下ではむしろ「宗教政党」化へと振れていた。今回の連立離脱で、再び会員以外の議員を擁立して「国民政党」化の努力を再開するのか、それとも比例代表を中心に宗教政党としての身の丈に合う規模で生き残っていくのか、熟慮が必要である。

宗教団体が作り上げた政党が、国政に関与するまで成長したことは、世界的にも、また歴史的にも希有である。創価学会が「信教の自由」と「政教分離の原則」を踏まえて、公明党を通じての政治参加するという一大実験が、「政界浄化」と「国民のための政治」を如何に実現するか、応援し、見守っていきたい。

202618日脱稿



注* 小林良彰「閉塞感打破する進歩的立案に期待」『公明』201911月号、12-17頁。パネル調査「2019年参院選事前事後調査」は次のサイトで公開部分は閲覧できる。

https://jesproject.wixsite.com/jesproject/jes-3 小林氏からは、この調査の生データを提供していただいた。改めて感謝申し上げる。


【参考資料・文献】

   日本政治、大きな岐路に―『自公政権とは何か』著者・中北浩爾氏、緊急分析51

webちくま(筑摩書房の読みものサイト)20251030 11:36

https://www.webchikuma.com/n/n42f7f5f5af6a?sub_rt=share_sb&fbclid=IwY2xjawN1rvNleHRuA2FlbQIxMQABHrECowjsuaYDeyRvXBxPAljJAwdqhUMh-FsuNCRhFWnG5IxqYVX-j7qoxWCD_aem_oUQIeTCJ3PzNVJa07rMlRA

 

 公明党の斉藤鉄夫代表は20251010日、自民党との連立から離脱することを表明した。自公政権は開始から26年後に終焉を迎えたのである。

 なぜ公明党は連立を解消したのか。

 第一に、自民党の派閥の政治資金収支報告書への不記載という「政治とカネ」をめぐる問題が支持者の不満を高め、蓄積させるなか、それを原因として与党の一角を占める公明党も20241027日の衆院選に続き、25622日の都議選と720日参院選で大敗を喫した。自民党との選挙協力のメリットが薄れたのである。

 第二に、衆院選で自公が過半数を割り込み、少数与党政権に陥ったため、パーシャル連合のかたちで野党の国民民主党や日本維新の会から協力を得て予算や法案を成立させざるを得なくなった。公明党は連立を組んでいるがゆえに、かえって自らの政策実現をアピールできなくなった。

 公明党にとって選挙協力と連立政権の両面で自民党と組むメリットが低下するなか、安倍晋三の後継者を自任する右派で公明党との政策距離が大きい高市早苗が2025104日、石破茂に代わる自民党総裁に選出された。高市は公明党嫌いで知られる麻生太郎元首相を後ろ盾としたばかりか、旧安倍派の幹部で不記載額が多かった萩生田光一を幹事長代行に起用した。しかも、国民民主党との連立拡大を優先し、公明党を軽視した。

 こうした情勢を受けて、公明党は企業・団体献金の規制強化を主張しつつ、連立からの離脱に踏み切ったのであった。もしも自民党総裁選で小泉進次郎や林芳正が勝利していれば、公明党の連立離脱は起こらなかったであろう。

 このように「実利」が失われたばかりでなく、人脈に基づく「情」も失われ、自公政権は終わりを迎えた。かつて自公政権を担った公明党のある重鎮は、「残念だ。パイプがなければ、作ればよかったのに」と嘆いた。

 自民党の高市総裁は最終的に1020日、日本維新の会の吉村洋文代表らと「連立政権合意書」に調印し、翌日、新政権を発足させた。自民・維新両党の政策距離は近く、合計の議席は衆参両院の過半数に接近するので、この組み合わせは連立理論からみてかなりの合理性を有する。

 しかし、現在のところ、自維政権は自公政権ほどの強さを持ちそうにない。

 

名ばかりの「友党」、公明党を犠牲にした自民党のツケである連立解消

大濱崎卓真(選挙コンサルタント・政治アナリスト)10/12() 8:01 Yahoo!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/df5c3179ea826b31df417e95fb2ea3c1f38b69b5?fbclid=IwY2xjawOC3m1leHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEec-9SEO3KTuU_P9kUY4S7KBStBk4Umw4m800P4whfS9Eu9FiOZp2qPZPVzYw_aem_1f75PKD6GfJKvNhNxcLlPw

 

 

③菅原琢の政治分析

公明党は「下駄の雪」ではなく「下駄」である―延命装置が外れた自民党が生き残る道は?

https://sugawarataku.theletter.jp/posts/5081d250-baf2-11f0-886a-eb80e1bf6219?utm_medium=email&fbclid=IwY2xjawOQFQFleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEenWyfHNUo47PY85lbdlFdSF-6icC9hIBHzv0AnL7PjontvXGyz-5TEW_HSVw_aem_vukIRSktjXmoYV1Y9qOJmA

 

④創価学会が連立離脱を総括 JIJI.COM 高橋正光 12/14 14:00配信 Yahoo!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/84fcd900ab3ed563afcbf4dae7260b2d0eb3967b?fbclid=IwY2xjawOs-MZleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEeyypBu1YqKw8MXUUNBhi_83WfqfeHCX0a4pyB5KbToVw1MDoUOCVnCRQBR7Q_aem_7ATQLZjrE_xIiuKAe7_Geg

 

⑤蔵前勝久・中北浩璽『日本政治と宗教団体』朝日新書、20251130日刊。

https://amzn.asia/d/3krb1yk

過日、共著者の中北浩璽先生からご恵送いただいた本書を読了した。下記のような章立てで、宗教団体ごとの政治への関わり、選挙での動きなど、新書ではあるが取材に基づいて詳細に纏められている。

序章 公明、26年の連立離脱

1   創価学会

2   旧統一教会

3   神社と日本会議

4   立正佼成会

番外編 創価学会と立正佼成会の違い

コラム123

あとがき

 

『自公政権とは何か』(ちくま新書)で知られた中北氏が書き下ろした創価学会と公明党に関する第1章は、本年10月の公明党が自民党との連携を解消し、連立政権から離脱した事も視野に入って論じており、関心深く何度か読み返した。塚田穂高さんと私の論考や本も冒頭で参照し、その上で、両者とも1970年の「政教分離」期までが主たる関心時期なので、本書では、それ以降の時期を詳細に論じるとしている。確かに、私は「言論問題」以降の展開は荒削りであったので、ご指摘は一部あたっている(笑)。

ともあれ本書で、非自民連立政権の成立、自社さ政権との交代、新進党の結成と崩壊の過程での公明党の複雑な分党と統合のプロセスについての詳細な記述は、極めて参考になった。二見伸明、東祥三各氏が新公明に合流しなかった理由と経緯なども、改めて把握できた。

 公明党全体の過程を「国民政党」化と「宗教政党」化と区分し、自公政権下ではむしろ「宗教政党」化へと振れたこと、今回の連立離脱で、再び「国民政党」化の努力を再開するのか、それとも比例代表を中心に宗教政党としての身の丈に合う規模で生き残っていくのか等の指摘は極めて興味深かった。これらの用語の妥当性には疑問もあるが、大枠の方向性として何を目指すのか考える上では、有益な分析ではある。

 他の章も、部分的には知ってはいるが、宗教団体ごとの政治への向かい方を詳細に論じた文献は最近は多くないので、勉強になった。旧統一教会と自民党との関係についての第2章は蔵前氏が精力的に纏めている。現下の私の関心からは、特に第4章:立正佼成会と番外編が参考になった。彼らの創価学会への対抗意識、政治参加の様態の相違など極めて興味深い。最近は創価学会、SGIも立正佼成会と同席したり、会話する機会も増えているので、今後どのように展開するか関心がある。

 

⑥斉藤鉄夫・佐藤優『公明党の決断ー連立離脱と新たな挑戦』第三文明社、20251231日刊。

 

⑦島薗進編『政治と宗教: 統一教会問題と危機に直面する公共空間』(岩波新書、2023124日)。第3章の要点を参考までに。

拙論の要点を若干紹介する。まず戸田会長時代に国立戒壇建立を政治進出の目的の一つとして掲げたが、池田会長時代に公明党結成した1964年には国立戒壇建立は放棄されている。言論出版事件を受けて公明党と創価学会の分離を徹底したが、その際の19705月の会長講演で国立戒壇建立を「改めて」否定した。

戸田時代の政治進出では政党結成は否定し、会員は無所属や他党から立候補した。地方議会と参議院のみとし、衆議院へは出ないと公言したが、衆議院進出の準備はするようにとの指示はあったと考える。故に公明党結成の段階で『政治の宗教』を出版もできたし、最初の衆院選で一挙に25議席も獲得できた。

その後、公明党は宗教政党として創価と一体不二路線で出発するが、言論問題を受けて1970年に両者の分離を徹底し(それを政教分離と言うのは誤り)、普通の国民政党となる。創価は一支援団体と位置づける。その後の転機は、1993年の非自民連立政権・細川内閣の誕生と、政権参加である。ここまでは結党以来の「反自民」「非自民」路線の展開であった。この政権は短命に終わったが、衆議院選挙制度の改革を行い、941月に、小選挙区300、比例代表20011ブロック単位の比例代表とする「小選挙区比例代表並立制」を成立させた。政権交代が容易な二大政党制をめざしたものであったが、小選挙区制は弱小政党にとっては圧倒的に不利であり、それを補うため比例代表制並立となった。しかしその配分などをめぐって内部分裂し、細川首相の政治資金問題も浮上したことで、内閣は総辞職し、非自民連立政権は短期間で瓦解した。

政権復帰に執念をもやす自民党は社会党委員長を時期首班指名選挙に担ぎ出し、946月に自社さ三党の変則的な連立内閣・村山内閣が誕生した。野党に転じた新生、公明など各党は次期衆院選に向けて一大新党の結成を急ぎ、同年12月に「新進党」が誕生した。しかし公明党は「分党」して参加するにとどまり、非改選の参院議員11人と地方議員、党職員、機関紙などは残留組織「公明」として残り、党本部も引き続き信濃町に置かれた。この分党が後の新進党解党の一因になった[薬師寺、二〇一六、第6章。島田・矢野、二〇一〇]。

 新進党は翌957月の参院選に初挑戦し大躍進した。比例区では当選議席も自民党を上回り、得票数も自民党に比例区で150万票、選挙区でも50万票上回った。このままいけば次回の衆院選では新進党が確実に勝利する見通しとなった。この結果に大きな衝撃を受けた自民党は、新進党躍進の主たる要因を創価学会の組織力とみなし、「信教と精神性の尊厳と自由を確立する各界懇話会」(通称「四月会」、946月設立)が中心となって自民党機関紙「自由新報」などで反創価学会キャンペーンを開始し、さらに宗教法人法改正を利用した攻撃を始めた。

1995年は、1月に阪神淡路大震災が起こり、3月にはオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こし、それをきっかけにして11月に宗教法人法が改正されるなど激動の一年であった。宗教法人法改正の主要な目的は広域に活動する宗教法人を文部省が監督できるようにする等の監督権限の強化にあったが、参議院での審議に入ると自民党は創価学会の池田名誉会長の参考人招致を要求した。新進党はそれに強硬に反対し、代わりに秋谷栄之助会長を呼ぶことで決着した。秋谷の参考人聴取は同年12月に行われ、冒頭陳述では法改正に込められた政治的意図を批判した上で、創価学会の政治との関わりを「一.国家権力を使って布教しない。一.国家からの特別の保護や特権を求めない。一.支持する政党や候補者が宗教的中立であることを求める。また支援する政党の人事・政策・財政には一切干渉しない。創価学会の支援活動は全体の宗教活動の量からみればごく一部である」などと主張した。

 しかしその後も自民党は創価学会と新進党への攻撃を続け、その効果もあってか199610月の第41回衆院選で新進党は敗北し、翌年には解党してしまった[薬師寺克行、二〇一六、第7章]。

〈自公連立政権の成立〉

 新進党解体後の野党は分立したが、民主党が自民党への対抗軸として浮上した。分党していた公明関連も合流して、9811月に新「公明党」として再結集した。その過程で創価学会と自民党との和解が進展した。いくつかの地方選挙で創価学会は自民党候補を支援し、その見返りに自民党は創価学会への攻撃をやめ、98428日付けの自民党機関紙『自由新報』には、かつての創価学会への攻撃が「池田名誉会長の名誉と人権を傷つけた」とする創価学会の抗議文と、それに対する謝罪文を掲載した。

 その後、自民党は同年7月の参院選で大敗し、橋本龍太郎内閣が総辞職して小渕恵三内閣が誕生した。しかし参議院は少数与党の「ねじれ国会」となったため、山一証券の破綻などバブル崩壊後の金融関連国会を乗り切るため、自民党は連立の相手を求めて公明党にさらに接近してきた。支持母体の創価学会には自民党への強い警戒心が残っており、まずは閣外協力からとの判断であったが、小渕首相が景気対策の一環として公明党が求めていた地域振興券の発行を進めるなど、歩み寄りを強めた。翌991月に始まった第151回通常国会では、公明党も自民党へ協力し、自由党とも連携して新ガイドライン(新しい日米防衛協力のための指針)関連法、憲法調査会設置法、国旗・国歌法、通信傍受法など難しい法案を軒並み成立させ、公明党の協力が有効であることを示した。

 1999105日に、自民・自由・公明の三党連立内閣が発足した。この連立には、両党内部や支持者からの反発や世間の驚きを招き、それまで自民党を支援していた立正佼成会が離反するなど宗教界にも波紋が拡がった。その後、自由党が連立から離脱し(200041日)、その直後に小渕首相が脳梗塞で倒れ、帰らぬ人となった。しかし自公連立は継続した。2009年の民主党による政権奪還の際には自公ともに下野したが、201212月の第46回衆院選で自民党が圧勝して政権に返り咲き、第二次安倍晋三内閣で自公連立も復活し、自公連携は26年間も続くことになった。

〈自公連立政権の問題点〉

(二)政権参画の代償 123-125

 公明党は、自公連立に留まることで代償を払うことにもなる。まずいえることは、自民党政治の補完役となり、自民党政権の施策に共同責任を負わねばならなくなった結果、公明党の方針に疑問を感じる支持者が増えてきたことである。

 小泉政権以降の新自由主義的経済政策、その延長のアベノミクスの結果は、一部企業は活性化したものの、多くの労働者の賃金は上がらず、格差がかつてなく増大した。既に指摘したように、主要な支持者である創価学会員の社会階層は今でも低く、格差拡大の被害をもっとも強く受けている。最近の公明党投票者の社会属性調査でも、学歴は中学卒一二・五%、高校卒一一・四%に対し、短大・高専・専修学校卒五・一%、大学・大学院卒四・四%である。世帯年収も約半数が四〇〇万円未満であり、六割以上が五〇〇万円未満となっている。日本の世帯平均年収が五六〇万円であることから、公明党投票者は景気悪化の影響を強く受けやすい層であり、七〇%が将来の生活に不安感をいだいていることが確認されている[小林、二〇一九]。

 公明党が宗教政党から「国民政党」になったことで、その政策は現実的な政治経済政策が柱となり、理屈の上では、支持者もその善し悪しで判断しなければならなくなった。現実的な政策と、主たる支持者である創価学会員の現実的な利害の対立、さらには理念上のズレが生じる可能性を、筆者は早くに指摘した[中野、二〇〇三、第五章]。また松谷が指摘したように、「公明支持層は支持政党である公明党の立ち位置によって争点態度を決め」ており、価値意識や経済的利害のズレがあっても、党および支持母体を信頼して投票行動を決めてきた。しかし自民党の右傾化や格差拡大によって、それらのズレや利害対立が鮮明になるにつれ、支援者の精神的ストレスも増大し、選挙活動への意欲を削いでいるのではないかと思われる。加えて、ごく少数の衆議院小選挙区で議席を確保するために、種々の政治的駆け引きも行われ、支持者の意欲の低下を招いている。

それを示す現象は、「公明支持層の公明離れ」である[中野、二〇一〇、一二八頁]。自公連立が復活した後もそれは続き、二〇一六年の参院選でも、公明支持層の二四%(朝日新聞出口調査)が野党統一候補に投票した。各選挙での得票数も、二〇〇五年衆院選比例の九〇〇万票弱をピークに減少傾向にあり、二〇二二年参院選比例区では六一八万票まで落ち込んだ。この要因は創価学会員の高齢化、それに伴う組織力の低下といわれることが多いが、支持者の不満や意欲の低下も大きな要因ではないかと考える。衆院小選挙区からの撤退も含め、改めて検討する時期にさしかかっているともいえよう。

 

1.自民と公明の支持層についての社会層分析では、後者は未だに低所得層が多く、前者と大きく異なる。公明支持層は価値意識としては非保守的にも関わらず、新自由主義的または国家主義的諸政策に、自らの価値意識との矛盾を考慮せず支持を与え、結果として保守補完の安全装置として働いている。

2.自民の右傾化や経済格差増大が強まると、支持者の本来の理念との解離が鮮明になり、公明支持層の公明離れや自民候補支持への意欲減退を招いている。会員の高齢化もあって、全体として選挙活動の低下が起こる。様々な点で曲がり角である。

本書は旧統一教会問題を受けて、多様な人々が合意形成して社会を造る場である「公共空間」において、宗教はどう参加すべきか問うた。宗教には、他者が理解可能な共通言語で政治を語ること、他者の人権と自由の尊重、公益性への貢献、公開性と透明性が求められることを、忘れてはならない。結

 


島田裕巳『参政党の研究』(宝島社新書、2025月11月)を読む2025年11月22日

https://tkj.jp/book/?cd=TD072870&path=&s1=

新しい形の「スピリチュアルな国民運動」
参政党の強みと弱みを暴く


2025年7月、参議院選挙で参政党という新興政党が突如大躍進し、他方で、自民・公明・共産などの既存の組織政党が大敗北を喫した。この参政党について、新書ながらも、排外主義ともとれる「日本人ファースト」のほか、「反ワクチン」「オーガニック」といった身体感覚やスピリチュアルに訴える政策、徹底的にオールドメディアに抵抗するそのスタイルなど、既存政党と大きく異なる特徴、支持層の特性、公明党・創価学会との類似点など、全体像を描いた労作である。
50万部突破の『言ってはいけない 残酷すぎる真実』著者・橘玲さんとの対談も加え、いつもながらの読者を引きつける筆致には感心する。参政党のみならず、既存政党や日本政治の今後を考える上で必読の文献と思われる。

ポイントは下記のようなもの。
●世界の潮流である反グローバリズムという名のナショナリズムが参政党を生んだ
 単に右派の台頭、ポピュリズムの暴走などではなく、世界全体や現代日本を覆うグローバリズムという巨大な力に生活を脅かされていると感じる人々の抵抗運動であり、自分の身体感覚を通して真実を求めるスピリッチュアルな自己探求という現代的精神性、これら二つのものが日本の国体と伝統という物語を触媒として結びついた、新しい形の「スピリッチュアルな国民運動」である(はじめに)。
●参政党の戦略の根幹は卓越した「争点設定」
参政党の支持層は、現在の生活難と将来を危惧する就職氷河期世代と、子供の教育や健康に不安を感じている女性層などである。彼らに対し、それらの不安・不満の原因はグローバル化を推進する既存勢力、エリート層、外国人であり、それらから日本文化と自分自身を守らなければならないという「日本人vsグローバリスト(ディープステイト)」という単純な二項対立に集約し、その解決策として「日本の国柄を守る」「日本人ファースト」という分かり易く突き刺さるキャッチコピーを叫んで取り込んだ。
●巧妙な組織化戦略
 SNSの活用など他の新興政党にも見られる手法も当然活用しているが、参政党の強みは勉強会や会費制会員制度など組織化を地道に進め、政界進出も地方議会から進めたという手堅い基盤をつくった点にある。食や医療のあり方が不満をいだく人びとをターゲットに、バブル時代に流行した自己啓発セミナーの洗脳的手法も活用(79)。かつての山岸会にも見られる、現代社会で孤立し、浮遊している人びとに新しいコミュニティを提供した。
●「龍馬プロジェクト」という伏線
 参政党の地方組織、地方議員を生みだした苗床は、代表の神谷が10年以上かけて築きあげてきた「龍馬プロジェクト」。全国の若手地方議員による超党派のネットワークであり、「日本の未来を憂う」という一点で、所属政党の垣根を越えて地方議員を結びつける私塾であり、政策集団。2022年の参院選以前から、参政党が各地の地方議会で議席を獲得できたのは、このネットワークに参加した地方議員が鞍替えして参政党の候補者になったから。彼らは地盤と選挙のノウハウをもつプロである。参政党の組織は、「龍馬プロジェクト」出身の経験豊富な地方議員と、SNSや勉強会を通じて集まった、熱心ではあるが政治的には素人の二重構造で出来上がっている。このような基盤があったからこそ、急速な党勢拡大に成功したのだ(274-275頁)。
●参政党のモデルは、創価学会・公明党と共産党
 参政党の創立には、弁護士、学者、他党の職員など多様な人びとがかかわっているが、その一人でジャーナリストの篠原常一郎氏は「実は参政党のモデルにしたのは、共産党と公明党」と証言している。彼はかつて共産党の専従職員で、民主党で政策秘書も務めたこともあり、党費や「赤旗」の購読費を集めた経験から、参政党では月1000円の党費を毎月納めさせる仕組みを作ったという(276)。
 著者の島田氏はさらに、「龍馬プロジェクト」に見られる地方議会から国政へという戦略は、まさに創価学会・公明党の政治参加のプロセスそのものであり、そこから学んだものが大きいはずと断言する。それだけではなく、参政党の支持基盤は就職氷河期時代の人びとに代表される年収400万円以下のロウアーミドル・クラス(中流下層)であるが、彼らに新たな共同体と物語を提供する参政党の運動は、戦後の高度成長期に都市に流入してきた下層の人びとに希望と政治参加の道を提供した創価学会・公明党の現代版だと論じる(276、212-217)。
●参政党を躍進させたれいわ新選組のポピュリズム
 この点は評者も思いつかなかったが、かたやリベラルな方向性の代表と見做されている「れいわ新選組」支持者から参政党へと有意味に流れているという(第5章)。従来の自民党支持層の極右的な部分が参政党へ流れたとも言われているが、参政党へ流れた支持層の分析はさらに必要と思われる。私は、上記の現在のロウアーミドル階層の人びとは公明党支持層とも重なっているはずなので、そこから参政党へ流れた人びとも一定いたと考えている。

保守・リベラルともに支持し、女性人気も高い参政党が目指すところは何なのか、なぜこれほど多くの有権者が熱狂するのか。現代の日本人のメンタリティを踏まえ、その人気の根底にあるものを見事に描いています。また、上記の諸特徴が逆に足かせや対立の要因となって、参政党が没落する危険性、可能性も結論部分で指摘しており、なかなかの力作でした。